2008年09月23日

柴田淳「お父さんより。」歌詞レビュー

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「お父さんより。」

 

 いつの間に美しくなる
 娘は持つものじゃない
 ありがとう・・・と さよならを込めて
 僕の手を握ってる

 寂しいとはこんなものかと
 何を食べても味気無い
 適当にやり過ごしたくて
 出来るなら ここから去りたい 



☆「お父さんより。」は、映画「おろち」の主題歌として創作された

「愛をする人」のカップリングナンバーであるが、

 ピアノの弾き語り、そして父親から娘へという

 これまでにない視点での歌が注目される所である。

 柴田淳は若い女性によくあることだが、 

 実生活で母親とは親密であるが、

 父親とは必ずしも良好な関係ではないと伝えられている。

 そのためか「空の色」と言う母親を歌った歌はあるが、 

 父親を歌った歌は初めてで、しかも、結婚して家を出て行く娘に 

 父親視点で語りかける歌とは、どうした風の吹き回しかと

 ファンは誰しも驚かされた事であろう。

 実際に未だ未婚の柴田淳が、どんな気持ちでこの歌を書いたのか、

 どうしても妙な勘ぐりをしたくなってしまう。

 さて歌い始めから実に古典的とも言えそうな歌詞で、

 私はすぐにかぐや姫の名曲「妹」を思い出した。

「妹」は早くに親を亡くし2人暮らしの兄が嫁ぐ

 妹への思いを歌った歌であるが、「お父さんより。」も  

 出来る事なら父と娘だけの父子家庭として味わいたい歌のようだ。

 ただし柴田淳はそういう設定を少なくとも歌詞の中で暗示しては

 いない。私はそこは詰めの甘さだと思う。恐らくは彼女自身の

 実際の家庭を考えた場合にそこまで書き切れなかったのだろう。

 

 さあ今行け 今羽ばたけ
 君が選んだのなら 間違いじゃないんだろう?

 行ってしまえ 戻ってくるな
 さっさと行け・・・
 幸せになれ



☆私はこの父親の言葉には違和感を覚える。

 率直に言ってどのような父親像を思い浮かべれば良いのか

 わからないのだ。キャラクター設定が甘いのだと思う。

「羽ばたけ」などと洒落た言葉を口にし、「君」と娘に語り掛ける父親

 は現代的なイメージで、決して娘の結婚に反対する頑固親父では
 
 なかろう。それは柴田淳自身の父親のイメージなのかも知れないが、

 この古典的設定の歌を生かすのに適しているとは言い難いと思う。
 

 
 君が生まれた朝のこと
 初めて僕を呼んだ日も
 昨日のように憶えているのに
 子供じゃない君がいる

 初恋に破れた君に
 一緒に呑もうと誘ったね
 ビールの泡で呑んだフリで
 ふたりして奴を罵ったな

 さあ今行け 今羽ばたけ
 君が望んでいるなら 引き止めても行くんだろう?

 行ってしまえ 戻ってくるな
 行かないでくれ・・・
 幸せになれ


 
☆苦言ばかり呈して来たが、一緒に呑んだエピソードはいい。

 私のような古い人間からすると、娘が失恋したからと言って

 一緒に呑む父親、というのが理解出来ないきらいはあるが、

 なるほど柴田淳の設定した父親像はこのような現代的父親で

 あったのか、と納得させられるエピソードである。 

 そう、エピソードだ。私がこの歌詞を聞いて物足らなく思うのは、

 具体的なエピソードが希薄だからだ。

 確かに表面上は父の娘に対する思いが切々と描かれているようだが、

 言葉だけで人の感情を表してはいけないのである。

 空虚な美辞麗句を並べても人の気持ちを動かす事は出来ない。

 柴田淳自身の先行曲で例を挙げれば「HIROMI」における

 ブカブカの指輪。同じような設定と言った「妹」における、味噌汁

 の作り方、といったような具体的な物を介したイメージで、

 より深い感慨が生まれるものだと思うのだ。

 これはうがった見方をすれば、柴田淳自身が父親と歌に出来るよう

 な具体的な体験を持たない事の反映ではなかろうか?人の想像力

 にはおのずと限界があるものであるから。

 

 帰っておいで 戻っておいで
 君はいつになっても 僕の最後の恋人
 
 行っておいで 頑張ってこい
 おめでとう・・・
 幸せになれ

 幸せになれ・・・



 あえて辛辣に言わせてもらえば、このような歌詞は誰でも書ける。

 リアルで生々しい若い女性的感性を武器に心に響く歌詞を

 書いて来た柴田淳だが、父親の視点で語るのは余りにも荷が

 重過ぎたと言わざるを得ない。

 決して悪い曲ではなく、スタンダードな出来ではあるのだが、

 彼女のこれまでの歌詞の冴えを知っている者にとっては

 物足りず、先行する名曲「妹」の域には到達しなかったようだ。

 が、芸域を広げる意味では意義ある挑戦であったと思うし、

 これから彼女が成長して、このような困難な設定の曲であっても

 楽々と乗り越えていく姿をファンとして見守っていきたいと思う。

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柴田淳
posted by ゴルゴ40 at 18:07| 広島 ☀| Comment(1) | TrackBack(1) | しばじゅんソング歌詞レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
【愛をする人】も【お父さんより】も、【白い世界】【花吹雪】【カラフル】と繋がる《揺り籠と鼓動のリズム》で流れます。確かに歌詞はアッサリしすぎてる感じはありますが、嫁いで家を出て行く娘に対して、[含みのある言葉]を口にすべきでない、とも想えます。今まで考え方は違えても、シンガーソングライターの道へ入ることを許してくれた、その寛容さに優る〈モノ〉は無いと想います。私自身【月光浴】の歌詞は『きぎなり』さんの解説を読むまで分かりませんでしたが、三十路を越え嫁いでいく娘に、もう教えることも無い、後は、この曲のリズムに載せて分かり合いたい、との気持ちでしょうか。
柴淳の唄はスルメソングゆえ、繰り返し耳に入れるたびに、味がしみ出てくると想います。
http://www.geocities.co.jp/Bookend/5477/music/gekkou.html
Posted by むかで at 2008年09月23日 21:15
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Tracked: 2008-09-23 18:25
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