2009年11月23日

柴田淳「Love Letter」歌詞レビュー

「Love Letter」

 

 確かめるように 私の名を呼ぶ
 あなたの声はまだ 聞こえている

 朝日浴びたら 灰になる私は
 動く煙草の火に 小さく返事をした

 また寂しい目をした人を
 愛してしまったのかも
 失くしたもの 壊したものばかりで
 一瞬でも満たされたくて 



☆柴田淳の18theシングル「Love Letter」は、
 1年以上の沈黙を破って放たれた、
 7分を超える長尺の作品で、
 これまでの彼女の集大成とも言えそうな
 聞き応え十分のラブバラードである。

 まずサビに至る静かな語りの部分で早くも、
「朝日浴びたら、灰になる私」と、
 ドキッとするようなフレーズが飛び込んで来る。
 死、あるいは破滅をイメージさせるこの歌詞は、
 作品全体を覆った負のオーラのさわりに過ぎない。

 死んでいる、あるいは死んでいくのは私か、それともあなたか。
 少なくとも柴田淳が歌っているのは、
 健全で一点のくもりもない恋愛関係などではない。
 
「また寂しい目をした人を」
 愛してしまったのは、
 決して幸せなだけの恋愛関係にはなれない、
 私の宿命なのだろう。
「失くしたもの 壊したものばかり」と
 後悔だらけの女性が、又してもその宿業を負わされると
 わかっている男性と恋に落ちてしまったのだ。 
 
 柴田淳自身の男性経験を暗示するかのような歌詞はしかし、
 私達の心にも強く響いて来る。
 なぜなら人は皆誰しもうまくいかないとわかっていても、
 これまでの失敗を繰り返すがごとく
 異性と経験を持ってしまうものであるからだ。

 

 いつかあなたが死んでいっても
 私なら大丈夫 
 ずっと前から一人だった
 あなたを愛した時から
 
 たとえ私が先に逝っても
 あなたなら何も変わらない
 振り返らないで生きてゆけるわ



☆死んではいない。
 なのに今から死んだ時のことを歌わないでもいいではないか。
 だが、ここは得てしてむしろ陳腐に聞こえる「死」という
 言葉に注目させて、相手が死んでも大丈夫、と言い切る強さを
 訴える柴田淳の技巧が光るサビである。

「ずっと前から一人だった
 あなたを愛した時から」とは、何という強さであるか。
 私はこの歌詞を聞いて背筋がゾクリとし、
 これだけでこの作品が傑作であることを確信した。

 それは寸分たりとも相手に依存しない、究極の愛のかたちである。
 あなたを愛したという事実だけで十分なのであり、
 満たされている私にとっては、あなたが存在しなくなっても
 大丈夫なのだ。
 そしてそれを「あなたを愛した時から」
 ずっとだと訴える、柴田淳の歌詞の凄みはここにある。
 
 こんな女性に愛されてしまったあなたも同じだ。
 私がいなくなっても大丈夫だと、言い切られてしまう。
 たとえ後添えを迎えることになろうとも、
 振り返らずに生きていける、だなんて、
 この女性の何と強く、そして優しいことよ。
 

 
 柄じゃないけれど 信じている運命
 ずっと誰かのこと 探してる
 
 誰のものにもならない自由人
 見つからないだけね 私でもないみたいね 

 慰めだけのふたつの影も
 何かを意味しているなら
 知らないまま 出逢わず生きるよりも
 きっときっと違っているよ


 
☆前節で強烈な愛の究極のかたちを歌いながら、
 ここでの歌詞はひどく苦い。
 現実の私はあなたとの愛に懐疑的であり、
 あなたも又そうである。

 この一種残酷なリアリズムが柴田淳の真骨頂である。
 そんなに簡単に運命の人と出会えるものか。
 あなたも私も、探しあぐねて迷いに迷う人生だ。

 が、しかし。
 
 ここで柴田淳は力強く、否ボソボソとだが言い切るのだ。
 今はお互い「慰めだけ」のような2人に思えても、 
「知らないまま 出逢わず生きるよりも」ずっといいんだ、
 そして間違いなくあなたが運命の人なのよ、と。

 

 いつかあなたが消えていっても 
 私なら大丈夫
 何もあなたに聞かないのは
 これ以上愛さないため

 たとえ私が先に逝っても
 あなたなら何も終わらない
 振り返らないで生きてゆけるわ

 いつかあなたが死んでいっても
 私なら大丈夫
 いつかまた出逢う気がするの
 どこか似ているあなただから

 たとえ私が先に逝っても
 あなたなら何も変わらない
 振り返らないで生きてゆける
 歩いてゆく 重ねてゆくわ

 流れてゆく
 生きていけるわ



☆そして畳みかける究極の愛のかたち。 

「何もあなたに聞かないのは
 これ以上愛さないため」
 懐疑的だった前節の私が、恋愛に強く踏み出したおかげで
 ここまで強くなれたのだ。

「いつかまた出逢う気がするの
 どこか似ているあなただから」
 限りある人の世を全うすれば、
 お互い恋に臆病だった2人も
 いつかまた出逢えるのだ。
 
「Love Letter」は、全ての恋愛に不器用な人達に
 柴田淳が贈る究極のラブソングである。
 人はどこまで強く人を愛することが出来るか。
 彼女の希有な歌唱に乗せてこんな強烈なバラードを
 歌われては、どんな人も熱く込み上げて来るものを
 禁じ得ないであろう。

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posted by ゴルゴ40 at 20:14| 広島 ☀| Comment(1) | TrackBack(1) | しばじゅんソング歌詞レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by くりすちゃんるぶたん at 2013年07月16日 14:08
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